ホームレスに勧められたビールを飲んだ話

  • 投稿 : 2013-03-08
  • 更新 : 2013-05-25
昔の話です。
なんか世間知らずで、いろいろ勘違いしていたころの話です。今でも相変わらず、世間知らずで変なところがたくさんありますが、そういうことは気にしない方向でお願いします。


田舎者の僕は、都庁の展望台(無料)を南北ともみてかなり満足していました。やっぱり、東京はすごいなとか思ったりしてね。隣の田舎者の女子学生たちも、地平線がかすんで見えるとかいって喜んでおりました。

都庁の展望台を見た後、新宿中央公園に向かう途中で、都庁を写真に収めたい思って、陸橋あたりでデジカメで写真を撮ろうと思いました。不幸なことは度重なるようで、何とデジカメにメモリーカード(CF)が刺さってなくて、写真自体が取れませんでした。

がっがりしてたら、斜め45度の方向にいるホームレスのおじさんが、私に怒ったような口調で、話しかけてきます。なんか訛りがあるようでよくわかりません。

勝手に写真をとったといって、怒ってるのかなと思い、また興味本位で写真を撮ってると思われて、相手は深く傷ついたのかなと思いました。無視してても良いかなとは思ったんですが、都庁をとってただけですよと説明だけはしても良いと思って話しかけました。

でも、聞く耳を持ってないのです。にーちゃんの方が顔色もいいし、いろいろ幸せそうな旨を私に言ってくるんです。実際は、そういうわけでも全然なくて、その時は、世間一般でもかなり不幸な部類だったと思います。

ある意味、不幸だからこそ、無視しても問題なさそうなことに、関わってしまったと今だとそう思います。

まだ誤解があるのかなぁと思い写真機(デジカメ)を見せて、フイルム(メモリーカード)自体もなくて、都庁取れなかったんですと言いました。

そうすると、ますます怒ったような口調になり、フイルムの話なんか俺知らんとか言い出しました。なんか、うまく伝わらないのを悲しい気持ちで、仕方がなくそうですねと言いました。

おじさんは、お金さえもらえれば写真なんかいくらとっても良いのだけどとこれまた、私の理解を超えるような発言をするのです。

いや、ただ、私は都庁をとってたことだけを言いたかっただけなんですと悲しげに言ったんです。

そうすると、おじさんは、ポカリスエットのペットボトルに入ったお茶らしくものを差し出して、「飲むか?」といってきたんです。

明らかに汚い感じで潔癖の私は絶対に無理なのですが、そのときは飲んでも死なないだろうという意識と飲んであげようという意識があって、「1口だけでよいですか?」といったんです。不幸でなにか勘違いしていたその当時の私だからこそ、そう思ったわけです。

おじさんは、「ほう、飲むか、1口だけがいいんだよ」とちょっとうれしげでありながら、目は鋭いです。

で、馬鹿正直に1口飲んでみました。ビールでした。

「これ、ビールですよね」とおじさんに言ったら、「ちゃう(違うという意味)」と言うんです。私はアルコールに弱いから、酒かどうかはわかるから、絶対にアルコールは入っているといったんです。

そうすると、おじさん、お茶ならこれかもしれんと、ちょっと小さめのペットボトルにはいった少量のお茶らしき汚いものを差し出すのです。とりあえず飲む気持ちになってたので、
においをかいでアルコールでないことを確認して、飲んだらこれまたビールなんです。

「これ、ビールですよね」とまたおじさんに言ったら、鋭い目で「ちゃう(違うという意味)」と言うんです。

なんか、素直に分からなくて、おかしいなぁと思ってたら今度は気さくに私に話しかけてきたのです。

「俺は、焼酎の方がすきなんだ。やっぱり甘い酒はさけといえん」とか言い出しました。私は、酒駄目で、甘い酒なら飲めたりするのだが・・
と心の中で思いながら、「そうですか」と相づちをうったんです。

そしたら、「あくまで、俺はということで、いろんな奴いるからね」と言ってきたのです。

で、なんか、訛りがひどくて分からなかったけど、その後少しだけ話聞いていて・・。

で、すこしして手を差し出してきたので、握手しました。心が通じ合った気がしました。

で、いつでもここにいるから、気が向いたら遊びにきてくれよとか
言ってくれて、私も、機会があればまた来ますねといって
別れたのです。でもって、「にーちゃんも頑張りや」と言ってくれました。

その後、ホームレスに好かれるぐらいなら、ホームレスになっても大丈夫とかいう変な考えに陥って、でもって、2口なのにアルコールが体中に回ってきて、急に、馬鹿なことをしたと思うようになったんです。

工業アルコールはいってるとか言うオチはないかなぁという気にもなりはきそうになりながら、必死でうがいしました。あと、明らかに不衛生だし、すぐには死なないということと、安全だというのを完全に勘違いしてました(汗)。

その後、2時間ぐらい公園で、今回の経験に関していろいろ考えてみたんです。

・ビールをビールでないという理由は?
・ビールをお茶といって出す理由は?
・最初に怒ってた理由は?
・最後に仲良くなれた理由は?
・次回も同じことができるか?
・いろんな場面で感じた違和感は?


とかいろいろ考えてしまいました。でもって、私は結構勘違いの連続で相手に接していたのではないか?という気もします。

で、考察も数通りも考えられ、どうもどれが妥当なのかも分からないし、
どうも私の考えもいろいろ間違ってるんです。

でも大雑把にいうと、このおじさんは、いろんな出来事で深く深く傷ついてきたことだけは確かだろうとその時は思いました。まあ、不幸な状況に陥った人が、心に傷がないなんてありえないんだという当たり前の話なんだろうけどね。不幸な時は、変な勘違いに陥りやすいと思います。宗教などに走りがちなのもわかる気がします。

しかし、私は2度と怪しげなものを進められても飲まないと思います。

僕の中では、「ホームレスにビールを飲まされる事件」として脳内で記録されてるのだが、まあ自分自身の意思で飲んだわけだから、ちょっと違うんだろうなと思う。人間の認識や記憶なんて、結構いい加減で適当だなといつも思います。

スポンサーリンク